« 竹林(たけばやし)はるか遠く  ヨーコ・カワシマ・ワトキンズ著 | トップページ | 竹林はるか遠く あらすじ 2  兄-淑世 »

竹林はるか遠く あらすじ 1

話は1945年3月頃から始まる。主人公川嶋擁子は父が満州鉄道に勤めていた為、一家で朝鮮北部の羅南(らなん)に住んでいた。平和な村だった。父は会社に住込み1週間に一度帰って来るという生活だった為、普段は母と兄の淑世(ひでよ18歳)、姉の好(こう16歳)、擁子(11歳)の4人暮らしだった。

両親はたとえ戦争中であっても擁子に習字や茶道、華道、詩歌の詠み書き、日本舞踊などの稽古を続けさせていた。東京大空襲の事は家族の耳に入っていた。大日本帝国陸軍は軍の病院を拡大する為に力ずくで朝鮮から農地を奪った。朝鮮人達は大日本帝国に統治されていた為に、日本人を嫌い、戦争を快く思っていなかった。

そんな時、擁子は陸軍病院で負傷兵の為の催し物に参加する子供に選ばれていた。当日擁子は日本舞踊を踊った。その中に生きる意欲を失い食事もとらず、治療もさせない人がいた。その人が松村伍長だった。擁子は松村伍長と会話する機会を与えられ、その会話が松村伍長の心を救った。

それから数週間後、傷痍軍人の着物を着た松村伍長が現れた。それからというもの松村伍長はしばしば擁子達の家を訪ねることとなった。

しだいに戦局が厳しくなり、兄の淑世は兵器工場で住込みで働くことになり、出かけていったその夜、突然誰かが戸を叩く音と叫び声が聞こえた。松村伍長だった。「まもなくソ連兵が上陸してきてきっとみなさんを探しにきます。ここに残っていては殺されてしまうでしょう。息子さんには京城(現在のソウル)駅で待っていると書置きを残して下さい。日本人の病人を非難させている赤十字列車(傷病兵輸送列車)が朝4時に羅南を出発します。それにあなた達が乗れるよう私が駅長に取り計らってあります。彼は私の友達なのです」

伍長は擁子の顎に手を触れて微笑むとおでこに唇をあて「君の事を忘れないよ」といった。「私は再び出征するように命令されています」と帰ろうとする伍長さんを擁子は呼び止めた。“武運長久”と擁子が書いた習字の半紙をすばやく巻いて伍長さんに渡した。「ありがとう。自分も皆さんのご無事を祈ります」そういい残して暗闇の中に消えていった。

1945年7月29日真夜中、三人は淑世と父に書置きを残し羅南から脱出した。母は細引きで自分の手首と擁子の手首を結びつけた。「これで絶対に離れ離れにならないわ」続いて好の手首を縛りながら「家の鍵は掛けていくけど淑世は窓からはいれるから大丈夫。あと私達がここを出る事を誰にも気づかれないように。たとえ何があっても駅までは静かにするのよ。わかった?」

三人は駅まで一番近い川沿いの道を歩いた。「静かに」母がささやいた。三人は雑草や小石で体をすりながら急斜面の土手を滑り降りた。「イル(1)、イー(2)、サム(3)、サー(4)」反日朝鮮軍だ。彼らは三人のすぐそばまできていた。「止まれっ!全員川岸まで走れ!敵を殺す訓練をする」敵というのは日本人のことだ。部隊長は三人のすぐ近くで敵の刺し殺し方や身の守り方を説明し、川や溝に死体を引きずり降ろす方法まで教えていた。やがて「全員泳げ」という命令と共に遠ざかっていった。

三人はまた道を歩きはじめた。やっと羅南駅に到着した。駅は日本人の衛生兵や民間医療班や傷病兵でごったがえしていた。朝鮮人の駅長は松村伍長のことなど構わず三人を乗せまいとした。軍医の威圧的態度にやっとのことで女性患者の貨車に乗れることになった。汽車は京城行きだった。貨車の中は死にそうな病人であふれていた。

しばらくして汽車が止まった。看護婦が「共産軍の兵隊達が車内を点検しているのだ!」といった。擁子は衛生兵に血のついた床に投げたおされた。好は横になるように言われ先ほど子供が生まれた女性の胎盤をおなかに乗せられ大きな敷布で覆われた。母にも横になるようにいった。そして血で汚れた擁子のブラウスを脱がせ好と母の顔をこすった。まもなく共産軍が飛び乗ってきた。

「ここにいるのは全員、病人か?」「我々は健康な日本人を探している。中年女性で、16歳と8歳位の少女と、19歳の青年を連れて羅南から乗ってきた者だ。名前はカワシマ」この難は看護婦の機知によりなんとかだます事ができた。また夜が更けていった。突然汽車が大きく揺れて止まった。飛行機が汽車の上を飛んで行った。先頭の機関車が爆破されたのだ。赤十字をつけた列車や船を攻撃してはならないのにだ。

京城から70キロ離れた所だった。共産軍がねらっている擁子たち三人はここで汽車を降り歩く事とした。線路伝いに京城に向かった。夜が明け始めると線路から離れ茂みを見つけ睡眠をとり日中は捕まらないように隠れていた。夕闇が三人を隠してくれるまで待ち、そして再び線路の上を歩きだした。

夜が明けると遠くで飛行機の音がしはじめた。三人は線路から離れて森の中に隠れた。丸1日寝た。目が覚めわずかなご飯を食べ終わった頃、突然3人の共産兵が三人の前に立ちはだかった。「立て、動くな!」と彼らは怒鳴った。共産兵は3人とも好を見ていた。「今夜楽しむには、丁度いい年頃だな」と一人がいった。その言葉が終わるか終わらないうちに、飛行機の爆音が聞こえ、三人の頭すれすれに飛んだ。よく訓練された三人はすぐに、地面に伏せた。ドカーン!

爆弾が近くで破裂した。擁子は気絶した。誰かが乱暴に擁子を揺すったので目をさましたが、擁子の右耳は聞こえなくなっていた。そして胸の激しい痛みと共に血が出ていた。共産兵は皆死んでいた。三人は生きていた。いつしかまた眠りに落ちていた。次の日に起きると好と母の姿に驚いた。好は共産軍の軍服を着、長い黒髪は切り落とされていた。母も軍服を着ていた。母は擁子の髪を剃った。そして擁子にも死んだ共産軍の軍服を着せた。それからまた何日も何日も線路を歩き続けた。
                                                        to be continud 

|

« 竹林(たけばやし)はるか遠く  ヨーコ・カワシマ・ワトキンズ著 | トップページ | 竹林はるか遠く あらすじ 2  兄-淑世 »

中国関係」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

朝鮮関連」カテゴリの記事

歴史」カテゴリの記事